北山杉の成長
【春】
植栽
うららかな陽差しの中で、杉の植林作業が行われる。前の年に地拵えをした地面に穴を掘って、苗畑で2・3年育てられた苗を1本1本丁寧に植え、添え木をしていく。京北全体で、毎年約10万本の苗が植えられる。
【夏】
下草刈り
若木が雑草や雑木に押し倒されたり、その根元が曲がらないようにするため、下草刈りを行なう。
下草刈りは、2年目から毎年2回、木の高さが草丈を越えるまで続けられる。質の良い木を育てる為には欠かすことのできない作業である。
【枝打ち】
成長を続ける木の枝を切り落とす、枝打ちを行なう。まっすぐで節のない、切り口がきれいな円形の木を育てるための作業である。枝打ち作業は将来の用途により、さまざまな方法で行われる。
【間伐】
木の年齢が20年目ぐらいから、枝打ちと合わせて間伐を行なう。余分な木を伐って、木の間隔を適当にあけることによって、林の中で十分な光りを取り入れ、残った木の成長を促す。
【伐採】
手をかけ、愛情を注いで成木になるまで、早いもので20年。製材用素材は80年から100年。そしてようやく伐採の時を迎える。
高級品は傷をつけないよう、先にベルトで吊るしてから切断する。
【木材の運搬】
伐採した木材は、使用目的に見合った長さに切られ、トラックに載せる。
ヘリコプターも利用され、より効率的な搬出作業が行われている。
さらに近年、ふもとの一般道路と山奥を結ぶ林道の開設工事が計画的に進められて、林業の生産性の向上、作業能率の効率化には欠かせないものとなっている。
【市】
京都府近隣を中心に、業者が集まって競りが行われる。景気のよい競り売りの声とともに買い手が決まっていく。
丹精こめて育てた木が競りにかけられるのを見守る林業家。わが子を送り出すに等しい感慨が胸をよぎる。
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磨き丸太のできるまで
【磨丸太とは】
京北では、昭和30年代から、杉の素材に付加価値をつけるための研究開発をすすめてきた。その成果として登場したのが磨丸太である。
【人造絞丸太】
絞巻き
人造絞丸太は、杉の木肌にいろいろな形をした「ハシ」と呼ばれる当て木をして、1年から数年間放置し、杉の成長によって人工的に絞模様を作っていく。
樹齢や立地条件など、木と相談しながら、1本の木に600本から800本の当て木を巻いていく。この作業は、絞りの着物にたとえらることもある。
非常に手間のかかる作業であり、すぐれた感性と熟練を要するものなのである。
【人造絞丸太】
伐採~乾燥
伐採した原木は、山で自然乾燥させた後に、それぞれの林業家の家で加工される。
規格の長さに切り、作業がしやすいように、ケント付けをする。
次ぎに皮を剥ぐ。かつては竹ヘラで行なっていたが、今ではノズルの先から高圧で噴き出してくる水で、非常に効率的に行なうことができる。
ひび割れを防ぐために背割りを施し、1・2ヶ月間自然乾燥させる。乾燥が偏らないように、少しずつ動かしてやることも必要である。天候に応じて、屋内や外に出し入れを繰り返す。
【人造絞丸太】
磨く
十分乾燥させた後に、磨く。1本1本丁寧に磨いてゆく。
水洗いし、出荷される。この間20日から30日。良質の原木にさらに手をかけ、日本一の磨丸太が誕生する。
【桁丸太の加工】
桁丸太の加工も同様の方法で行われる。
皮を剥ぎ、背割りをして乾燥させ、製品となる。
【磨丸太の市】
京北銘木生産協同組合では、10月から5月の間に10回市が立つ。
京都、大阪、奈良はもとより、遠く九州や東京の業者も参加する。
「せりこ」の名調子で、1本1本が競りにかけられ、丹精こめて生産された磨丸太が全国に送り出されていく。
「京北の磨丸太はまっすぐで、つやがよい」と好評のこの高級建材は、現在京北全体で年間10万本を超える数が生産されており、今後も需要ののびが期待されている。
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北山杉とともに
古代より日本人の住まいの主流であった木造の家は、今その良さが見なおされている。天然の省エネ素材である木材は、断熱性や温度調整にすぐれ、また住む人にぬくもりを感じさせる。この健康的で快適な木造建築は公共施設などにもその用途を広げ、その建築素材として京北の木材が大きな役割を果たしているのである。
こうした需要に対し、京北の林業は、より良質な木材の安定供給をめざして、品質改良や品質管理、生産の効率化を推進。森林組合、事業協同組合、第三セクターなどが連携しながら、京北の林業の明日に向けて意欲的に取り組んでいる。
北山杉の葉を使って草木染めも、京北ならではのオリジナルな作品として好評を得ている。
草木染めで赤糸の色を出すのは非常に難しいとされている。しかし、杉の葉で染めた赤色は日光堅牢度が高く、退色しにくいのである。
濃い緑の杉の葉から生まれた、あざやかで美しい色の数々。化学染料とは一味違うやわらかな色調に魅せられて、京北の杉を知る人も多い。
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